『電子工作の基本』補記 <順不同>
★0 :趣味の始まり
私は1949年生まれ、家にTV(まだ真空管だった)や電話が入ったのは小学校高学年になってという時代でした。
そのころTVで観ていた映画の一場面で、自分と同じくらいの年の子が祖父にラジオを組み立ててプレゼントした
のです。これは大変衝撃的で、すぐに本屋さんで調べ、ゲルマニウムラジオであることを知って、くずやさん(今の
ジャンク屋さん)の段ボール箱をかき分けて部品をあさりました。出来上がったラジオは居住地がたまたま電波に
恵まれたようで(横浜)、とても良く鳴りました。初めてイヤホンから流れた歌謡曲は今でも耳に残っています。
当時は今のように子どもが楽しめるようなものはなく、ラジオを組み立てるのを趣味とする仲間が何人かいました。
そうした子どもが共通してあこがれたのは「アマチュア無線」です。立派なアンテナを立てた家を何軒か訪問させて
もらったものです。受信機までは作りましたが、その当時で
10万円は掛かると言われた無線局の開設は泣く泣く
諦めざるを得ませんでした。切なく悲しい我が少年時代の思い出です。(今でも立派なアンテナを見かけるとあの
当時を思い出し胸が高鳴る)
結局大決断で趣味として取り組む方向を「オーディオ」に切り替えました。くずやさんで電蓄(真空管が
7本も 8本も
立ったアンプとスーピーカーのセット)が
1000円で手に入ったのです。これを直し、安物のレコードプレーヤーと
ソノシート(ペラペラのレコード盤)で音楽を聴いた、これが現在まで続く趣味の始まりとなりました。
★1 :ハンダごて
電子工作では普通20W〜30Wのものを使います(真空管アンプなどでは60Wが使われる)。20Wと30Wでは、
使ってみると分かりますが、その差はかなり大きいです。私が感じる両者の長所、短所は次の通りです。
<20W>
長所:細かい個所やキットの基板などでは適温で使いやすい。
短所:ハンダが少し多めに使われた箇所では、いくらこて先を長く強く当てても溶けない(手に負えない)。
<30W>
長所:慣れると作業を効率よく進められる。ハンダが多めに使われた箇所でも簡単に溶かすことができる。
ハンダ吸い取り線を使う場合も簡単に溶ける(20Wでは厳しい)。
短所:高熱のため、手際よくやらないとパーツにダメージを与える恐れがある。例えば青色LEDが壊れやすい。
また、汎用基板のランド(穴の周りのドーナツ状の銅箔)をはがしやすい。
両方を所持して使い分けると良いですが、まず1つ用意するとしたら20Wのものを選び、慣れてきたら30Wのものも
手に入れると良いでしょう。もちろん余裕があれば、最初から温度調節ができるものを選ぶと良いです。
ちなみに私は30Wのこて1つでやっています(ただし、極めて細かいところでは20Wのものも)。手元に濡れ雑巾を
置くと、こて先をきれいにしたり、熱を冷ますのに役立ちます。
★2 :ICやマイコンの足を折ってしまったら
マイコンやICをソケットに差したり抜いたりを繰り替えと、時として足を折ってしまうことがあります。最初は途方に
暮れますが、次のようにすれば大丈夫です。
部品(抵抗やコンデンサ)の足の残った線をICの折れた足の根元にハンダ付けするのです。他の足と長さを
そろえてICソケットに差せるようになればOKです。LEDの足が太く頑丈で使いやすいです
★3 :ICやマイコンのソケット
ICやマイコンはピンの数が8本から14本、18本、28本、40本と様々ですが、そのそれぞれに対してソケットを用意
するのは大変ですし、ピン数の合うソケットが手元にないこともあります。既製品のソケットの余計な部分を切断
したり、足りない分を継ぎ足したりという手もありますが、丸ピンICソケット(シングル20P)という製品があるので、
これを何本か用意しておくと、どのようなICにも使えます。基板に取り付ける際はICに差し込んだ状態で数か所
ハンダ付けするとよいです(ソケットを垂直にするため)。
★4 :意外とハンダ付けしにくいスズメッキ線
ショートする恐れの無いときは、ビニール線よりスズメッキ線の方が作業が楽なのでよく使いますが、意外とハンダが
のり難く手間取ることがあります。見た目ではよさそうでも、いわゆるイモハンダということもあります。スズメッキ線は
少し熱を多めにくわえるようにするとハンダがしっかりのるようです。
私は長めに残った部品の足を捨てずに溜めておくようにしています。部品の足はハンダがのりやすいので、短い
距離の場合は助かります。
★5 :手元にあると便利なラベル用シール、両面テープ、結束バンド、透明ボンド
ラベル用シール・・・本来の表示用のほかに、裸線同士が交差する箇所で間に挟み込めば絶縁の役目をしてくれる
両面テープ・・・電池ボックスや小さなスピーカなど、本来ネジ止めが必要な個所もこれで済ませられることが多い。
結束バンド・・・文字通りの使い方。複数の線を束ねる。
ボンド・・・配線で用いた長めのビニール線を基板に貼り付ける。透明の方が後がきれい。
★6 :コンデンサのはたらき(追加)
コンデンサは目立たないところでの力持ち、思わぬところで威力を発揮してくれることが多いです。一方で、古い機器
ではこのコンデンサ(容量の大きいいわゆる電解コンデンサ)が老朽化のため傷んでいることがよくあります。
・PICマイコンの例でいうと、16F84Aではまず電源に0.1μF(104)は無用だが、高機能のPICでは無いと動作が
不安定になる.。
・DCモータをマイコンで制御するときなど、両端子に0.1をかませるのは常識的に言われるが、実際には不使用でも
ほとんど問題が生じることはない。ところがある特殊なパーツを使った際は不可欠だった(原因究明に多大な時間を
要すという苦い経験)。
・音声合成LSIでは0.1が無いと動作せず。ほかにもこのようなことがあるかも知れない。うまく動かないときは試して
みるとよい。
・電源回路における電解コンデンサは効果てき面。大容量に越したことはないが大きくなるほど場所を取りコストも
上がるので、適当なものを見つける必要あり。例えば、IchigoJamの自作基板でDC−DCコンバータを使ってTV
モニター用の12Vを作っているが、これを直でモニターにつなぐとまともに動かず、電解コンデンサを入れたら動いた。
この例のように、やってみてわかるということがある。私は電解コンデンサに関してこのような経験多数あり。
★7 :DC‐DCコンバータ
上にも書いたモニター用の電源で用いたDC−DCコンバータですが、「HiLetgo
のDC‐DCステップアップモジュール」
(Webで見つかる)がとても安価でありながら良くできています。モニターは12V、200mAを要しますが、この
コンバーターでOKでした。結果、IchigoJam基板およびモニターが、携帯などで使われる電源アダプタ(5V、1A)
一つでまかなえました。一つ注意が必要なのは、出力のところに47μF程度のコンデンサーを入れることです。
★8 :IchigoJamのキーボード(書き換え)
一般にキーボードはかつて使われたPS2タイプと現在使われているUSBタイプがあります。違いはPCに差すプラグで
見分けが付けられます。一方、IchigoJam
の基板は当初USB用のソケットでしたが、紛らわしが問題となったのか、
PS2用に替えられました。従ってUSBタイプのキーボードは直に挿せなくなりました(間違いを防ぐため?)。
私がIchigoJam用に使っているSANWAのPS2タイプのキーボードが最近プラグをUSBにして売り出しました。
恐らくIchigoJamを意識してのことでしょう。ところがIchigoJamの方が最近キーボードの受け口をPS2にしました。
なんとも皮肉な行き違い。でもSANWAのキーボードにはUSBをPS2に変換するアダプタが付属しています。(双方が
行ったり来たり)
このように、USBをPS2に変換してくれるアダプタを見つけられれば、USBのキーボードを使うことができます。
(以前、そのような変換アダプタが見つけられなくて、否定的な書き方をしてしまいました)
★9 :キットの組み立てで注意すべきこと
知り合いの子どもが組み立てたELEKITのAM/FMラジオが鳴らないということでみてあげる機会があました。今のキットは
プリント基板がとても良く作られており、非常に組み立てやすくできていると感心しました。ハンダ付けもきれいで、
どこにも間違いはありませんでした。それでもうんともすんとも鳴りません。肝心なパーツを傷めたせいかとさんざん
悩みましたが、原因は思わぬところにありました。表面をよく見ると、抵抗やコンデンサがわずかながら基板から浮いて
いるのです。そして浮いた部品を押すと沈むのです。このことで、プリントが切断され断線状態になっていたのです。
裏面をいくら見ても切れているようには見えないのですが、テスターで当たるとつながっていませんでした。プリントを
補修するわけにもいかず、改めてビニール線でつなぎました。全てをチェックすると、こんな箇所が4、5か所もありました。
完了後は問題なく鳴りました。受信方式が昔とは全く違っており、感度の良さには驚きました。
キットの説明書には、「部品を基板にしっかり押し付けて取り付け、ハンダ付けするように」と注意書きがあります。
そうしないと、これこれのトラブルが生じますよ、という納得できる説明もあるといいですね。そのほうが子どもは(大人も)
「なるほど」と、注意してやるようになるでしょう。
★10 :低電圧で手軽に使えるアンプIC
下の図は低電圧で使えるアンプIC「82V739」の回路図例です(秋月で入手)。マイコン用の5Vの電源でも、高能率
(W数が大きいもの)のスピーカーをきちんとした箱に収めると、驚くほど豊かな音で鳴ります。
8番ピン(+V)のコンデンサは、すでに電源回路に組み込まれていれば不要です。0.1〜1μFのコンデンサは積層
セラミックタイプでもOKです。
5番ピンのCEは、0で機能する、1で機能せず、です。836のように出力段に大きな容量のコンデンサーや発振防止の
回路を設ける必要がなく、とても使い勝手の良いアンプICです。
電源がマイコンを用いている場合のように5Vの場合、Trのコレクタと電源の間にSPをつなぐという簡単な回路でも
あまり差はありません。なお、この場合のTrとして私はいつも2SC2001
を使っています。2SC1815 と同じサイズで
ありながら大きな電流を流せます。
★11 :ワイヤレスマイク(改定版)
本で紹介している回路より少し簡略化していますが、性能は変わりません。理屈でというよりたまたま見つけました。
コイルは0.6mmのスズめっき線で、丸い鉛筆を使って8〜10回ほど巻きます。緊密に巻いて、15mmくらいの幅になるように
均等に幅を広げます。参考までに、8回でおよそ91MHz、9回でおよそ87MHzでした。巻く回数で周波数を調整できます。
アンテナは+の端子から伸ばしています(2、30cm程度)。まずブレッドボードで組んでみるとよいです。
注:次もお読みください(2024.1.25)。
下の図は本に掲載したものです。その後オシロスコープで発振回路の状態を調べて比較しましたが、やはり下図の方が
発振の状態は良好でした。以下、調べた結果をまとめますので参考にしてください。なお、Trの2SC1815はY(L)でもGRでも
大差はありませんでした。試していませんが、BLやORでも同様と思われます。
アンテナが出ている点をP(電源1.5V側からの巻き数)としますが、オシロスコープであたった時のピーク電圧が最大である
点のP(巻き数)とその電圧を示します。なお回路のTrより左のコンデンサは上図と同じです。
1】コイル:丸い鉛筆(径8mm)に巻いた場合(幅は13〜15mm)
コイル:7回巻き、C1=5p、C2=5p
−−> 79MHz、P:2(56mV)
〃 C1=5p、C2=10p
−−> 72MHz、P:1(55mV)
〃 C1=10p、C2=5p
−−> 70MHz、P:2(70mV)
<上の回路の場合>
C1=5p −−>
91MHz、P:1(32mV)
C1=10p −−>73MHz、P:1(31mV)
コイル:6回巻き、C1=10p、C2=5 −−>
79MHz、P=2(75mV)
2】コイル:丸いはし(径7mm)に巻いた場合(幅は13〜15mm)
コイル:8回巻き、C1=10p、C2=5p −−>
70MHz、P:3(69mV)
7回巻き、C1=10p、C2=5p −−>
77MHz、P:2(69mV)
6回巻き、C1=10p、C2=5p −−>
83MHz、P:2(58mV)
6回巻き、C1=5p、C2=5p −−>
93MHz、P:2(50mV)
注:FMラジオの受信周波数は76MHz〜が一般的なようです。
注:FMワイヤレスマイクは送信(発振)周波数ができるだけ低いほうが高感度になりそうだということが分ります。
注:コイルの巻き方や配線の仕方によって発振周波数はかなりずれます。
注:上手くいかないのは送信周波数がラジオの受信周波数より低い方へ外れている場合が多いです。コイルの巻き数を
減らしてみるとよいです(ただし短くしすぎると元に戻せない)。クリップなどで一回分ショートさせるという手もあります。
★12 :高性能のワイヤレスマイクを作る方法
FMトランスミッターという製品があります。音源をFMの電波で飛ばして、FMを受信できる受信機(ラジオ)で受ける
というものです。我が家の場合、TVと食事をするテーブルが離れているので(年配者のせいで耳が遠いこともあり)、
TVのイヤホン端子の音声をトランスミッターで送信し、近くに置いたラジオで聞くようにしています。
ここで使うトランスミッターは(車用でなく)3.5mmのプラグ付き、充電可能な安価なものです(かつては500円くらいで
手に入れたが今は1000円くらい?)。驚くほど高性能で、一階の部屋の隅から二階の一番離れた部屋まで問題なく
届きます。
これにマイクをつなげばワイヤレスマイクになります。
最初にお断りしますが、電波法にひっかりはしないか?製品として売っているのだから心配無用か?あまりに
性能が良いので気にはなります。近隣でたまたまFM放送を受信している家があって周波数が一致したら受信できて
しまうでしょう。トランスミッターは周波数を変えられるので、放送局からできるだけ離れた周波数にするとよいです。
マイクは一般的なコンデンサマイクを使いますが、そのままでは出力が小さく使えません。そこで、Tr(2SC1815)で
増幅回路(電源は1.5V)を作って入れると高性能なワイヤレスマイクになります。
★13 :自作可能 HI-Fiミニステレオ
まずPhilipsのアンプIC TDA7056B を2個使って回路図のようなアンプを作ります(このICはかなり以前に使ったことがあり
もう手に入らないと思っていたが、AMAZONで見つかった。その安さから見て、多分中国製?)電源は手元にあった12Vの
ACアダプターを用いました。アダプターの出力波形をオシロで見るとわずかに波打っていましたが、220μFのコンデンサーで
きれいになりました。このICは本来出力が5Wあるので、かなりの音量で聴けますが、今回は小音量でしか聞かないので、
アダプターは大した容量でないもので大丈夫です。余裕を見て500mAもあればよいでしょう。スピーカーは一度使って
すっかり気に入ったPeerlessの製品で55o径のものです。音源はMECHENというメーカーの余計な機能なし(音質重視)
のMP3プレーヤーです。重くがっちりできていて持ち歩きには適していませんが、今回の使用にはぴったりの商品です。
箱の前面は小さな丸い穴をあけにくいので3oの合板を用いています。その代わり穴をあけた後内側にぎっしり角材をはりつけて
あります。その他の面は6oの合板を用いていますが、組みあがったあと、前後、上下に板や角材でがっちり補強しています。
こうした補強がないと、低音で板が振動し吸収してしまい音が貧弱になってしまいます。前面の底に75ox10oで奥行40oの
バスレフポートを設けました。参考までに全体の大きさは255ox110ox110oです。箱の中には吸音材を少し入れてあります。
机の脇に置いて小音量で聴いていますが、なかなか良い音です。MP3プレーヤーはちょこんと乗せた状態で取り外し可能です。
★14 Arduino、ESP32、ラズベリー・パイ に関して
現在よく知られた人気のマイコン(マイクロコンピューター)と言えば、上記の三つが挙げられるでしょう。
その中でも特にArduino が評判のようです。マイコンで制御・活用可能な新たに商品化されて登場する
電子機器の多くが「Arduino 対応」となっています。〇〇
対応と言うのは、その機器を動作させるための
ソフトが用意されており、NET上でダウンロードするなりして直ちに活用できるという意味です。あとは自身の
使用目的に応じてプログラムを組んでいけばよいわけです。
例えば、GPSを用いて自分の現在地や移動の様子を記録したいなどと言った、はっきりした目的のために
マイコンを使って実現しようというような場合は、いろいろ用意されたものを用いるのが手っ取り早くて好都合です。
一方、ある目的のためと言うより、マイコンを使いこなせるようになって、この先自分のアイデアでいろいろ
開発していきたいという場合はどうでしょう。
ある特定の機器が使いこなせたとしても、そのマイコンに対応していない機器の場合には、マイコンが本来
持っている機能やそれを操るプログラミングの知識・技能がないと、手が出せません。
Arduino 等のマイコンに取り組もうと考えた場合には、そのようなことを心得ておいた方がよいです。
Arduino に限りませんが、特に高機能のマイコンの場合は、その仕組みやもち備えた機能を知り、それらを
活かすための(マイコン特有の)プログラミング言語をある程度習得する必要があります。
そのような訳で、マイコンを活用する楽しさを自分のものにするためには、少し腰を据えた学習をするつもりで
臨んだ方がよいでしょう。ESP32、ラズベリー・パイに関しても同様です。
★15 PICマイコンで使われるアセンブラ(アセンブリ言語)
PICマイコンに関する詳しい説明は少し下の方にあります。ここではPICマイコンで使われる特有のアセンブラという
言語について少し解説します。
アセンブラ(正式にはアセンブリ言語)は、マイコンのCPUが理解するマシン後(機械語)を除けばもっとも原始的な
言語です。PICマイコンにもBASICやCと呼ばれる言語が用意されていて、より高度で複雑な計算などを必要とするような
場合(例えば高機能のロボットやドローンなど)はそれらが使われます。
PICマイコンに用意されたアセンブラ(PICマイコンを製造したMicrochip社が提供する)はたった35個の言葉(命令語)で
成り立っています。ですから、高度で複雑なC言語などに比べると、覚えるのは至って簡単です。(覚えるのが
苦手な私には大助かりです)
ただし、容易に想像できると思いますが、限られた乏しい言葉で考えていることを表すのは、どうしても困難さが
付きまといます。(アセンブラが敬遠されがちなのはそのせいです)
例えば、○○を何回か繰り返すとか、○○の場合は〇〇へジャンプとかいった、プログラムを作製する上で
よくつかわれる言い回しが、BASICやCでは、FOR〜NEXTとかIF〜THEN〜で簡単に書けますが、アセンブラでは
少し神経を使います。あとBASICなどと比べて、アセンブラで一番不便に感じるのは、配列が使えないこと、
そして四則演算が自由にできないことです(工夫無しでは255以下の加算、減算のみ可)。
C言語の場合、多くの人が取り組み作成したプログラムを使い回ししたりと効率的なことが多いですが(ただし、
この場合はそのプログラムがどのように書かれたものか理解するのは大変です。他人が書いたプログラムを
解読するのはなかなか困難なことです)、アセンブラの場合はまず自分で原点から作ることになります。
何かの機器やパーツを活用する場合は、そのデータシートに従って書いていくことになります。
RTC(RealTimeClock)と言って、100年分のカレンダーを搭載しており、年月日や週、時間・分などをインプット
すれば、少しの電圧で保持することで正確に時を刻むという小さな基板でできた製品があります(下の方の製作例にあり)。
これもアセンブラで時間をセットしたり、アラームとして使えるようにするには相当苦労しました(苦労した分喜びは
大きいです)。C言語だったら恐らく誰かが作ったもので簡単に実現できるのでしょう。
★16 私がPICマイコンに取り組んだ訳
私が最初に取り組んだマイコンはZ80というものでした(2000年より少し前頃)。70X50oくらいの大きさの基板に
Z80というCPU、RAM(データメモリー)、ROM(プログラムを書き込むメモリーが載っていて、ROMは一度書き込むと
書き換えるためには、毎回紫外線で消去する必要がありました。そしてPICマイコンが登場したのですが、何もかもが
驚きでした。基板状だったZ80マイコンに対して、PICはそのすべての機能が小さなIC状のチップに内蔵されているのです。
しかもプログラムメモリーがライター(ROMにプログラムを書き込む装置)を使って瞬時に何度でも書き換えられるのです。
ただ、PICの場合その当時最大のもので足が40本であり、I/O
が33本で、I/Oを多く使いたい場合はまだZ80に頼ることも
ありました。逆にI/Oが5、6本で済むような場合は一番小さな8ピンのものでできてしまいます。ちょっとしたところに
マイコンを使いたい場合はカードや基板でないPICマイコンは誠に好都合です。家庭にある電気製品で使われているのは
多くがこのタイプのマイコンです。Arduino
等高機能のマイコンはとても優れてはいますが、、簡単な電子工作に
活用するにはあまり適しているとは言い難く、使用目的に応じていろいろ選択できる(小型でしかも安価な)PICマイコンが
使いやすいと言えます。
★17 サーボモータについて(PICマイコンでの活用)
サーボモータと言うのは、普通のDCモータが連続して回転するのに対して、自由な角度だけ(一般的なものは180°の範囲で)
素早く回転させることができるものです。ロボットアーム(人間の腕のように自由に物を動かしたり掴んだりできる)を
イメージすると分かりやすいでしょう。デジタルICで動かすことも可能ですが、思うままにコントロールしたいとなると、やはり
マイコンによる制御ということになります。私の場合はマイコンはPICマイコンを用いました。
電子工作ではマイコンはじめいろいろ使われるパーツが5Vで動作するように作られていますが(最近は3.3Vというものも
あって、やり難く感じることがしばしばあり)、工作用のサーボモータも電源は5Vと言うのが一般的です。そういうわけで
ここでも電源は5Vとします。またサーボモータ(以下SMとする)は一番小型のSG90(9g)の場合で進めます。
まずSMをNETで調べると、たいてい次のような説明がなされています。
『0.5mSから2.4mSのパルス信号を20mSの周期で送ると、(基準点を
0°として)−90°〜+90°の範囲で回転移動させる
ことができる。この場合、(0.5+2.4)/2
の1.45mS の信号を送れば、基準点の位置(0°)ということになる。』
基準点はSMにとっての基準点と言うわけではなく、使う者にとっての基準点ですから、1.5mSとしてよいでしょう。
マイコンならば、このようなパルス信号を作るのは簡単です。ところで、私が最初に疑問に思ったのは、このパルス信号を
何個送ればよいのかということでした。ところがNETのどのページを見てもそのことに触れていないのです(当たり前すぎ
たのかもしれません)。そして分かったのですが、SMはある一定のパルス信号を送り続けるとその場に留まり続け、(これが
重要ですが)負荷に対しても自身の持てる力でその位置を保持し続けるということです。パルス信号がないとSMはある程度の
負荷で空回りしてしまいます(空回りしやすさは個体差がある)。私は移動させることばかりを考えていました。
そのような訳で、どのような位置にあったとしても、基準点の0°の位置(1.5mS
とする)に移動させたい場合は
1.5mS の5Vと(20.0−1.5)=18.5mS の0V
によるパルス信号を送ればよい(送り続ければよい)ということになります。
例えば、+60°の位置に移動させたい場合は、
(2.4−0.5)÷180 X 60+1.5≒2.1
ですから、2.1mS のパルスをこれも含めて20mS
の周期の信号で送り続ければよいわけです。つまり、5Vが2.1
mS、0Vが17.9mS
のパルス信号です。
単に移動させたいだけなら(移動先で負荷に耐える必要がない場合)、移動に要する時間だけ信号を送ればよいです(これが
分からなかった)。SMのデータシートを見ると、移動に要する時間が書いてあります。たとえば、
0.1秒/60度 (4.8Vのとき)
といったようになっています。この場合は、20mS
の信号を5回送ればよいわけですが、多くしても送りすぎと言うことはないので、
余裕を持った回数送ればよいでしょう。
余談になりますが、NETの情報ではなかなかどのように使いこなしたらよいかが分からず、上に記したようなことを習得するまでに、
思考錯誤でかなりの時間を要してしまいました。たとえばロボットアームで、目的の位置に移動できても重いものを吊り下げると
空回りしてしまうとか(これに関しては上にも書いた通り)、動きに不具合があると暴走したかのように急激な動きをしてしまうとか。
具体的なプログラムは『製作例』のロボットアームの記事をご覧ください。